2020年11月6日金曜日

夢と共に進む - Grow with Your Dreams

10年ほど前でしょうか、スペースXのロケットが爆発するシーンをテレビで見ました。それはスペースXの初めてのロケット発射実験だということでしたが、その後も、またその後も失敗、爆発を続けるのをニュースで見ました。

イーロン・マスクがスペースXを創業した時、多くの人がお前はおかしいんじゃないか、と言ったそうです。ある友人は、ロケット発射が失敗し爆発するビデオを集めて、それがどれだけリスクの高い事業なのか、マスクに理解させようとしたそうです。それにも関わらず、マスクはスペースXを創業します。彼の失敗を予想したのは、一般人だけではありません。人類で始めて、月面着陸した宇宙飛行士であり技術者のニール・アームストロングですら、マスクの失敗を予想していました。実際に彼は大小の失敗を重ねます。最初の3回のロケット発射は失敗でした。

マスクには、色々な欠点があるそうです。気分屋で、意に沿わない社員を瞬間的に解雇したりすることもあったそうです。普通であれば、そんな社長に人は集まりません。マスクは天才かも知れませんが、私たちは多くの天才が経営に失敗しているのを知っています。スティーブ・ジョブズも、一度はアップルを追い出されたことを、私たちは知っています。しかし、それでも人々は集まり、彼らは成功を収めています。それがなぜか、私には長い間、不思議でなりませんでした。

2年ほど前、何かの拍子にマスクのインタビューと、4回目のロケット発射成功までの軌跡を描いた映像を見て、私はマスクの信念を知りました。Being multi-planet species, being out there among the stars, is important for the long-term survival of humanity.  彼の信念は、彼がスペースXを起業し、大儲けをすることではなく、人類の未来の成長発展のためには、宇宙に飛び出すことが不可欠だと信じているのです。アームストロングが彼の計画に反対だと伝え聞いた時、マスクは涙を浮かべながらそれでも「I never give up.」と言う言葉を残していました。自分のヒーローが反対する、それでも彼は挑戦し、4回目にロケット発射に成功します。

夢の大きさ、そして信念の強さ、それがマスクをマスクたらしめている要因だと確信しました。そして2年前、自分の夢が何なのか、再度考えてみました。「人と会社を強くする」「世界一働きたい会計事務所を作る」弊社のミッションとビジョンをそう掲げていました。私は、社員に成長し、お客様に価値を与えることが出来るようになって欲しいと昔から思っていました。しかし、当時、私の思いとは裏腹に、社員の意思はバラバラ、まとまりのある状態ではありませんでした。私はどうしても、自分の夢を社員と共有し、社員自身も夢を持つことが出来る会社にしなければならないと思いました。自分の残りの人生を、その夢のために使う決断をしました。趣味でやっていた週末の草野球も、始めていたゴルフのレッスンも辞め、社員が成長し、幸せに感じるためにはどうすれば良いのか、ひたすら考え、ビジョンを描き続けました。社員には、私が彼ら・彼女らに成長し、その成長に喜びを感じて欲しいことを、何回も何回も、事あるごとに語り続けました。有志を募っては、金曜日の夜、酒を飲みながら会社はどうあるべきか、語り合い、そこで語り合ったことを、週末一人でまとめ、また社員に話し続けました。

何をやるか、ではなく、何のために働くか、それが何よりも重要です。私は、本気で弊社の周りの人々、会社が成長発展し、生き生きと活躍する姿を夢見ています。会計は、それを実現するための「手段」に過ぎません。多くの人は、会計は数字を合わせて、正しい財務諸表を作ることだと思っています。確かにそれが仕事ですが、数字を合わせるために会計をするのではなく、お客様がどのような状態にあるのか、どこに無駄があるのか、何をしたいのか、どうすれば成長出来るのか、それを常に考え続けること、その志こそが何よりも大切だと思っています。私が下積み時代に味わった苦しさは、先が見えない、夢が無い閉塞感からくる苦しさでした。だからこそ、私は社員に自分の夢を語り続けます。本気で人を、会社を強くし、全ての人が生き生きと成長する環境、それを実現したいと思っているからです。

このコロナ禍の中、弊社のお客様にも、売上が激減しただけでなく、ついには不本意ながら会社を手放さなければならなくなった方々もおられます。業績の悪化で本当に困っておられる経営者の方々も、リストラをされるかも知れないと不安を感じる社員の方々もおられるかと思います。本当につらく、苦しい状況の中におられる時、大事な会社を失ってもうダメだと思った時こそ、もう一度、自分がどうして働いてきたのか、本当はどんな会社、職場を作るのが夢なのか、思い出して欲しいのです。私も何度も何度も、挫折を繰り返しながら会社を経営してきました。もうダメだと思った時も何度もあります。しかしそれでも、社員、お客様のために努力を続けました。夢さえあれば、自分ひとり以上の能力を発揮できることができます。全てを失ってゼロになっても、夢さえあれば、もう一度やり直せます。

私の夢は、「人と会社を強くする」ことです。その夢を全社員と共有し、お互いの能力を高めあいながら、お客様の成長に貢献したいと思っています。全社員がその夢を本気で信じることができるまで、何回でも、諦めずに語り続け、この会社を社員が誇りに思える会社にしていこうと思っています。その私の信念から、「夢と共に進む - Grow with Your Dreams」を弊社の座標軸に据えています。