2020年7月1日水曜日

だからこそ、企業の哲学が重要

前回、日本電産の永守会長の話を例に、これから成果報酬のあり方、時間単価の概念が大きく変わるだろうと言う旨、お話ししました。今回はそれを踏まえて、「だからこそ、企業の哲学が重要である」と言うことをお話出来ればと思います。

数値実績を積み上げた成果報酬のみで人を判断するようになると、極端に言えば人はお金のためにだけ働くことになります。生活を満たした後は、高級車、豪邸、クルーザー、飛行機…と際限のない欲望だけをドライブに仕事をすることになります。私までの世代は、牛肉が食卓に並んだから、「お父さんお仕事頑張ったね!」と喜ぶ世代でした。大学を卒業したら、とにもかくにも給料を稼ぎたいと思っていました。しかし、今の若い世代の方々は、ある程度モノが満ち足りた環境で育っています。ハングリー精神に欠ける、と言う前世代の方々からの指摘もありますが、逆に「何のために働くのか」を私たちの世代より、更に深く考えている所があるように感じます。

「何のために働くのか」「どうしてこの会社なのか」 この本質的な問いかけに迷いがあれば、どれだけの給料を貰っていたとしても、心が満たされないのでは無いでしょうか。私は、この時代だからこそ、会社のミッションとビジョンを明確にし、会社が何をしたいのか、どこに向かっているのか、明確に示す必要があると思うのです。そして、マネジメントは、自分自身が何のために働いているのか、定義する必要があります。私の場合は、まずは従業員が成長できる会社であること、そしてお客様の成長に貢献できる会社であることです。弊社のミッション、「人と、会社を強くする」、ビジョン、「世界一働きたい会計事務所をつくる」には、私の人生の意義が全て込められています。

西郷隆盛の言葉に、「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり」と言う言葉があります。これだけの高い志を持っ高潔な人だったからこそ、西南戦争の際に会津藩から勇士がやってきたと言います。、本気で従業員のこと、お客様のことを思える経営者は強いです。かと言って、会社と言うものは、企業の存続と社員の努力に報いて良い生活をしてもらうために、収益性を高めなければなりません。哲学と実学、両方を兼ね備えて初めて素晴らしい企業となります。

色々な考え方があると思いますが、私にとって、私が弊社の経営者である意義は、「この会社に私より社員全員のことを考えて真剣に仕事に取り組んでいる人はいない」ことにあると思っています。自分自身の成功、名声、報酬よりも、社員全員が本当にこの会社で働いて良かった、そしてお客様がこの会社に仕事をお願いして良かった、と思ってくれることが、私にとって何より大事なことです。実際に、毎日それを真剣に考えて仕事をしています。

問題は、私に才能が薄く、中々思うように社員を成長させてあげられなかったり、お客さまを満足させられなかったりすることです。名経営者の話を聞いては、自分の才能の薄さに落胆することもありますが、私にできることは、せっかくこの会社に入ってくれた社員には、私の才能の限りは成長させるよう、考え続けること、そして彼らと一緒に、お客様が喜んでくれるサービスを提供し続けることです。振り返れば至らない所ばかりですが、ミッション・ビジョンの達成に向けて毎日真剣に仕事をしていきますので、今後とも、どうぞよろしくお願いします。